致死率が非常に高い感染症のエボラ出血熱とMERS(中東呼吸器症候群)で、治癒後の患者が再発しています。エボラ出血熱は流行していないイギリスで、MERSは終息しつつあった韓国での再発です。

エボラ出血熱

エボラ出血熱は、一本鎖RNAウイルスでのエボラウイルスによって発症する疾患で、致死率が50~90%に達するといわれてきました。

2014年6月からリベリア、ギニア、シエラレオネを中心とする西アフリカ地域で大規模な流行を起こしています。ウィキペディアの記事によると、WHOの2015年6月21日までの集計で27,550名が感染し、11,235名が死亡(死亡率41%)と大規模な流行でも高い致死率を保っています。

一方、MERSやSARS、インフルエンザのような呼吸器感染症ではないので、比較的感染が起こりにくい疾患ではあります。しかし、防護が適切に行われていない場合は、アメリカでの二次感染例が示すように流行を食い止めることはできません。

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MERS(中東呼吸器症候群)

MERSは2012年に初めて発生が確認された新興感染症で、一本鎖RNAウイルスのMERSウイルスによって発症します。10年ほど前にアジアで流行したSARSと同じ仲間です。MERSも37-40%と高い致死率が記録されています。名前が示すとおり、中東地域を中心に感染が広がっており、2015年には日本の隣国、韓国で大規模な流行が起こっています。

韓国での流行では致死率は36/186と19%でしたが、これまでに確認された全感染者の平均では40%近い致死率(合計で1500名足らず)です。韓国での致死率が平均よりも低いように見えます。最も感染例の報告が多いサウジアラビアの452/1029(44%)と比べると統計的に違いが見られます。

韓国で流行したMERSウイルスに意味がありがそう変異は見られなかったと読んだことがある気がしますが、医療レベルによるものなのか、人種の違いによって抵抗力が違うのか、患者の捕捉率が違う(大流行している地域では軽い症状の患者は検査・確定されなかったりする)のか不明です。

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エボラ出血熱の再発

エボラ出血熱では、治癒後も体内にウイルスが検出されることがありました。一旦治癒した患者が再発したことがあったかもしれませんが、アフリカの流行地では、治癒後の患者が再発したのか、再度感染したのか、たとえウイルスの型を調べたとしても完全にはわからないと思います。

2015年10月にエボラ出血熱を再発してニュースになった例はイギリスの病院職員で、エボラ出血熱の流行地のシエラレオネでボランティアをしていて2014年末にエボラ出血熱を発症した女性看護師です。2014年1月24日に治癒して退院しています。

その後、2015年10月9日になってエボラ出血熱を再発し、10月14日時点で危険な状態と発表されています。

Nurse Pauline Cafferkey is in a serious condition after being admitted to the Royal Free hospital in London with complications arising from the Ebola virus.
She contracted the disease when working in Sierra Leone on 29 December but was discharged three weeks later after being treated successfully. She was readmitted to the Royal Free in the early hours of Friday.
The 39-year-old was first taken to the Queen Elizabeth University hospital in Glasgow on Tuesday after feeling unwell. During her time there she was treated in the infectious diseases unit before being transferred to the Royal Free by military aircraft.
出典:『British Ebola nurse readmitted to hospital in 'serious condition'』(the Guardian)

14 October 2015 Updated: 1pm
We are sad to announce that Pauline Cafferkey’s condition has deteriorated and she is now critically ill. Pauline is being treated for Ebola in the high level isolation unit at the Royal Free Hospital.
出典:『Update on Pauline Cafferkey』(Royal Free London)

 再発?合併症?

記事の初出時、”relapse”(再発)という単語から、ウイルスが再活性化して検出されたとばかり思っていました。よく見ると、ウイルスが検出されたかどうかの記載はどこを見てもありませんでした。ただ、エボラ出血熱「の」合併症というからには、ウイルスが検出されたか特徴的な兆候があったかだと思うのですが・・・。そのため、下記の記事は大きく間違っているかもしれません。日本語のニュースソースにも出てきていたので、貼っておきます。参考:『エボラ熱から回復の看護師、合併症で重篤な容体に 英』(CNN.co.jp)

よく考えたら、「濃厚接触者が~~された」というのも見かけた気がします。

Fifty-eight people who have had close contacts with Pauline Cafferkey are being monitored for Ebola symptoms. Cafferkey, 39, was flown from Glasgow to an isolated unit at London's Royal Free Hospital, where she was readmitted with Ebola. An experimental vaccine called rVSV-ZEBOV has been administered to 25 people who have had contact with her bodily fluids.
出典:『Pauline Cafferkey: 25 close contacts given Ebola vaccine』(International Business Times UK)

58名の濃厚接触者が監視中で、そのうち体液に接触した25名が試験的なワクチンrVSV-ZEBOVを投与された、と書かれています。これは、エボラウイルスが体内に存在しているということで間違いありません。

VSV-ZEBOV

rVSV-ZEBOVは、2015年7月から臨床試験が行われているエボラウイルスに対するワクチンです。VSV-ZEBOVというもののバリエーションです。(Wikipediaにエントリーがあります)

カナダのNational Microbiology Laboratoryが開発し、現在の第3相試験のワクチンはMerckが製造しているようです。投与されたのがどこの製造かは分かりませんが、先進国のイギリスでこれを使ってみようという緊急性と必要性があったということ=ウイルスに感染性があった、と思うのには十分な根拠だと思います。(発表はされていません)

エボラウイルスの潜伏

過去には、治癒後3ヶ月経っても精液中にエボラウイルスが残存していたという報告があります。アメリカでは治癒後2ヶ月後に目の症状が出てウイルスの残存が見つかった例もありました。 (参考:『エボラ治癒後、眼にウイルス』)

が、治癒後9ヶ月経った時点で再発、しかもエボラ出血熱の患者がいないイギリス・スコットランドでの再発というのはかなりショッキングです。男性ではないので精液に潜伏ということはないので、どこにウイルスが潜伏していたのか、発症前に何か症状があったのか、一部はまた後で出てくるかもしれません。

エボラ再発のショック

再発は本人も驚いたと思いますが、医療関係者もショックを受けています。

The announcement shocked medical experts. While it is recognised that the virus can linger in parts of the body after a patient has recovered, it has never before been known to trigger potentially lethal disease months after the initial illness.
出典:『Pauline Cafferkey case shows we still know little of Ebola's long-term effects』(the Guardian)

以前、アフリカの感染地域ではエボラの「回復者」が差別を受けるということがニュースになっていました。間違いなく再発だと言えるケースは今回のイギリスが初めてだと思います。流行地域では(再発と思われたケースのほとんどは違ったのではないかと思いますが、)同じようなことが過去にあったの、かも知れません。いずれにしても再発は稀だとは思います。

ナイジェリアでは、エボラから回復した人、感染者の家族、感染者に接触した人たちは皆、病気からの回復は、エボラとの闘いの一歩を踏み出したに過ぎないと感じています。回復後も、偏見との闘いが待っているのです。
...中略...
エボラから回復した友達と会ったらどうするかと尋ねられた20歳のシメオン・オチビケさんは、「エボラに感染するのが怖くて、手は握れません」と答えました。
「その友達が、エボラに感染していないと病院で証明された上で退院したとしても、しばらくは近寄らないようにします」と、小さな青空市場で携帯電話の通話カードを販売するシメオンさんが続けます。「あなたがエボラから回復した人に触って、21日待ってもあなたが死ぬことがなければ、ぼくも触ります」とシメオンさんが語ると、友達も賛同の声をあげました。

出典:『ナイジェリア: 広がる差別、エボラ回復者や接触者の苦悩 地道な啓発活動で、正しい知識を伝える』(日本ユニセフ協会)

MERSの再発

一方、韓国でMERSの再発が報告されました。

 同省によると、この患者は1日に陰性の診断を受けてソウル大病院を退院したが、11日に発熱し再入院。12日の検査で陽性と判定された。
出典:『退院患者、再びMERS陽性=終息宣言先送り-韓国』(時事コム)

イギリスのエボラウイルスと比べると、本当に再発なのかは少し疑問です。

  1. 陰性と判定されてから10日での再発
  2. 陰性判定の詳細が不明。一回だけで判定した(とは思いませんが)場合には不正確
  3. 情報源が見つからないが、男性の発熱が悪性新生物(がん)によるものという話があった
  4. ウイルスが生きていただけなのか、残骸なのか今のところ不明
  5. 韓国ではMERSが流行していたので、他から感染した可能性を完全に排除できない

 

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