2015年12月1日から順次始まっていく厚生労働省主導の「ストレスチェック制度」は、ウェブ上で調査票の評価方法も公開されています。

これでやりなさい、というわけではないのですが調査票の「例」と一緒に出されていて過去の調査データもあるようなので、多くの事業所ではそのまま使うのではないかと思います。ストレスチェックを実施するためのプログラムやウェブサイトが公開されました。

調査票サンプル

職業性ストレス簡易調査票』(厚生労働省ウェブサイトより)

57項目からなる調査表で、

  1. 仕事上のストレス要因
  2. 最近1ヶ月の精神・身体の状態(心身のストレス反応)
  3. 周囲からの援助(周囲のサポート)
  4. 満足度

の4つのカテゴリーに分けられていますが、最後の「満足度」について評価方法がマニュアル内にありません。基本的にはこの質問は除くべきだと思います。強いストレスを抱えた人に「不満」と答えさせるのに加え、それを記入した調査票を事業所に渡さなくてはいけないからです。

なお、23項目で済ませる簡略版もありますが、それほど手間が変わらないと思うので57項目のほうがよさそうです。

評価方法

ストレスチェックで使う調査票を評価する方法は、調査票に書かれた回等を数値化して足し算して「心身のストレス反応」の評価項目がある程度以上悪いか、「心身のストレス反応」がある程度悪い上で「仕ストレス要因(仕事上の)」「周囲のサポート」が一定以上悪い場合、高ストレス者と判定されます。

つまり、仕事に関係なくとも抑うつ状態になっていれば高ストレス者と判定されます。その結果、仕事についての面談が必要かどうかは、現場の調査者が判定し従業員に提案するという形になりますので、「高ストレス」者は職場の環境が良いから出ないというわけではありません。

また、調査票の評価基準が全体の10%程度を「高ストレス」と判定するものになっています。マニュアルによれば、

該当する者の割合については、以下の評価基準の例では概ね全体の10%程度としていますが、それぞれの事業場の状況により、該当者の割合を変更することが可能です。
出典:『労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル』平成27年5月版(厚生労働省資料より)

と曖昧です。事業所の状況により基準が変更できるということも、いわゆる「ブラック企業」では思ったように働かないと思う原因の一つです。

調査票の数字を数値化する方法は2つあります。どちらの方法も根本的には同じ方法ですが、複雑な方法では4つのカテゴリーを細分化してそれぞれに点数を割り振っているのと性差を考えてあるので、それほど変わりませんが妥当性が高いと思います。

『実施マニュアル』にも書かれていますが、解説した資料『数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法』がないとわかりづらいです。

合計点数を使う場合(簡単)

『実施マニュアル』のページ番号40に出ている方法で、簡単に数字を足し合わせるだけの方法です。『数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法』を見ないと具体的にどういうことか理解しにくいです。

調査項目中に、「そうだ」と答えるほうがストレスが高い項目と低い項目があるために起こります。『選定する方法』に網掛けで例示して項目は1→4、2→3、3→2、4→1と数字を入れ替えて、3つのカテゴリーで数値を合計します。

いくつかの項目は点数を逆転させる厚生労働省資料より。灰色の項目は点数を逆転させる

さらにカテゴリー「A:ストレス要因」と「C:周囲のサポート」の数字を合計します。

マニュアルに載っている評価基準を用いると、

  1. 「B:心身のストレス反応」が77点以上(最高116点)ある場合
  2. 「B:心身のストレス反応」が63点以上あり、「A:ストレス要因」と「C:周囲のサポート」の合計点が76点以上(最高104点)の場合

に「高ストレス者」と判定されます。「D:満足度」は評価に影響しません

換算表を用いる場合(詳細)

『実施マニュアル』ではページ番号41に解説されています。換算表は『実施マニュアル』ページ番号37にあります。『選定する方法』に出ている具体例を見ないと意味がわかりません。
素点換算表の使用例厚生労働省資料より。素点換算表の使用例

この換算では、

  1. 素の調査票項目をいくつか集めてグループにします。
  2. 計算式に従って、調査票項目の回答の数字から計算します。
  3. 男女に分かれた換算表を見て、計算で出た数字に該当する点数を、そのグループの点数にします。
  4. 3つのカテゴリー「A:ストレス要因」と「C:周囲のサポート」、「B:心身のストレス反応」の点数を評価します。

合計点数を使う場合には、数字が高いほうがストレスが高いという評価になっていましたが、換算表を用いる場合は逆で数字が低いほうがストレスが高くなっています。手で計算することは少ないでしょうが、間違いの元になるので統一して欲しいところです。換算表自体も換算式が無駄に複雑です。研究段階のものの結果をそのままの形で公表してしまったのでしょうか。

マニュアルの評価基準では、

  1. 「B:心身のストレス反応」が12点以下(最低は6点)の場合
  2. 「B:心身のストレス反応」が17点以下で、「A:ストレス要因」と「C:周囲のサポート」の合計点が26点以下(最低は12点)の場合

に「高ストレス者」の判定になります。「D:満足度」は評価に影響しません

「D:満足度について」

上にも書いていますが、「D:満足度について」は評価されません。『実施マニュアル』からリンクされている10年以上前の調査結果では満足度も評価されていますが、実施される予定のストレスチェックでは評価されません

仕事に満足していますか?という質問は、トラブルを起こすだけです。

「高ストレス」と判定された場合に面談に進むには、事業者にストレスチェックの結果を提供しなくてはいけません。一種の踏み絵のように感じ、この質問に答えさせること自体がストレスになると思います

ストレスチェックを受ける側として知っておくべきことは、

  • 調査票自体が提供されるわけではない(はず)で、提供されるのはストレスチェックの「結果」のみである(項目ごとの点数もしくはグループごとに細かく分けたストレスプロファイル)
  • ストレスプロファイルには、「仕事や生活の満足度」として現れるが、これが最低の数値だった場合には「仕事に不満」とチェックしたことが自明である
  • ストレスチェックの結果を事業者に提供するという同意は、「個別」、「積極的」かつ「ストレスチェックの調査後」に行われる(=いついつまでに答えなければ同意したことにする、というのは違反)
  • 「面接指導の申出をもって、同意とみなす」ことはあり、事前に通知されるとは限らない

の4点だと思います。『実施マニュアル』ページ番号108、109に出ています。

労働基準監督署への報告

従業員がストレスチェックを受けた後、事業者は所轄の労働基準監督署へ報告書を提出しなくてはいけません。「様式第6号の2」なるもので、『実施マニュアル』のページ番号101に出ています。マニュアル中のリンクは2015年11月5日現在、まだリンク切れになっています。様式には表面とあるので裏面があるのかもしれませんが、見られないので判りません。

表面を見てわかるのは報告するのが

  • 従業員の何人がストレスチェックを受け、何人が受けていないか
  • 面接指導を受けた人数(「高ストレス者」ではない
  • 検査・面接を行った人
  • 検査結果の集団ごとの分析(どういうストレスを抱えた人が多いかの分析)をしたか(分析結果ではない

とかなり形式的なデータだけです。果たして役に立つのでしょうか、この報告。(2015年11月5日現在、ウェブサイト上の公開情報のみを基にしています)

ストレスチェック調査票を埋めてみた

ストレスチェックの調査票を、昔を思い出しながら1つ、今の状態(アメリカでポスドク)をかんがみながら1つ、埋めてみました。

日本では同僚の中ではストレスを上手く避けていたほうだと、自分で思っていましたし、周りからも思われていたようです。

某診療科医師

  • 合計点数を用いる方法:A+C=79点、B=69点
  • 素点換算表を用いる方法:A+C=24点、B=13点

ポスドク(博士研究員)

  • 合計点数を用いる方法:A+C=63点、B=58点
  • 素点換算表を用いる方法:A+C=30点、B=18点

評価

日本を思い出して書いたほうは「高ストレス者」の領域に入ってしまいました。医者は24時間営業のサービス業のようなものなので致し方ないといえばそれまでですが、日本に帰国したら耐えられるでしょうか?

今日11月4日のYahooニュースに『警官のストレス、看護師より低い? 京都の女子大生調査』(京都新聞)というニュースが出ていました。やっぱり、医療従事者、特に看護師は(業務上の)ストレスが多そうです。(総合的に見ると医者のほうがストレスが多いと思います)

今もストレス反応が高めですが、アメリカ生活が楽しいなりにストレスなのでしょうね、たぶん。

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