地震のニュースを見るとき、(緊急地震速報でなければ)まず目に入るのはするのは「震度」の数字です。日本人は震度表示になれていますが、アメリカなどでは震度表示がないのでどのくらい揺れたのか、ニュースを聞いてもわかりません。実際の被害状況が揺れの大きさを物語っているだけです。

震度表示に慣れてはいるのですが、震度の計算方法を調べたので書いておきます。

いろいろな震度表示

気象庁震度階級

日本で使われている「震度」です。1884年に初めて作られて以来、1996年以来使われているものは4代目です。後で詳しく書きますが、2016年現在使われている震度階級の特徴は、計測した揺れの大きさにしたがって作られていて、主観や被害の大きさ自体が影響しないので、判定が迅速で客観性が保たれる点にあります。

ロッシ・フォレル震度階級

海外で主に使われている震度階級の元になった震度表示で、イタリア人とスイス人の地震学者が作った震度階級です。1873年のものが知られているようです。10段階で揺れの大きさを表現します。

  • I. Microseismic tremor. Recorded by a single seismograph or by seismographs of the same model, but not by several seismographs of different kinds. The shock felt by an experienced observer.
  • II. Extremely feeble tremor. Recorded by several seismographs of different kinds. Felt by a small number of persons at rest.
  • III. Feeble tremor. Felt by several persons at rest. Strong enough for the direction or duration to be appreciable.
  • IV. Slight tremor. Felt by persons in motion. Disturbance of movable objects, doors, windows, cracking of ceilings.
  • V. Moderate tremor. Felt generally by everyone. Disturbance of furniture, ringing of some bells.
  • VI. Strong tremor. General awakening of those asleep. General ringing of bells. Oscillation of chandeliers, stopping of clocks, visible agitation of trees and shrubs. Some startled persons leaving their dwellings.
  • VII. Very strong tremor. Overthrow of movable objects, fall of plaster, ringing of church bells. General panic. Moderate to heavy damage buildings.
  • VIII. Damaging tremor. Fall of chimneys. Cracks in the walls of buildings.
  • IX. Devastating tremor. Partial or total destruction of buildings.
  • X. Extremely high intensity tremor. Great disaster, ruins, disturbance of the strata, fissures in the ground, rock falls from mountains.

今でもこの改訂版を使っている国もあるようですが、VIが「寝ている人が起きて人が飛び出してくるレベル」、VIIで「パニックが起こる、建物に障害がある」、VIIIが「建物の壁に亀裂が起こる」、IXで「建物の一部もしくは全部が破壊される」などとなっています。

建物が壊れ始めるのが10段階中8番目で、9番目が建物が崩壊する段階になっています。日本の1996年以前の震度階級に照らし合わせると、ロッシ・フォレル震度VIII(8)が旧気象庁震度5でロッシ・フォレルX(10)が旧気象庁震度6になりそうな気がします。

メルカリ震度階級

ロッシ・フォレル震度階級をイタリア人の火山学者ジュゼッペ・メルカリが改定したものが原法で、現在はメルカリの原法を12段階に拡張したメルカリ・カンカーニシーベルグ震度階級(MCS)やメルカリ・ウッド・ニューマン震度階級(MWN)がアメリカなどで改定メルカリ震度階級(Modified Mercalli Intensity: MMIもしくはMM)として使われているとウィキペディアに出ています。リンク先のアメリカ地質調査所のウェブサイトを見てみると、確かに改定メルカリ震度階級に基づいて地震マップを作っているそうです。が、今まで一度も見たことがありません。(そもそも、西海岸ではある程度地震があるはずですが地震自体あまり聞きません。)

また、揺れの程度は12段階に分ける改定メルカリ震度階級を使っているものの、日本の気象庁震度階級と同じように、計測した揺れに応じて震度が表示されることになっています。計測した揺れに基づいてはいますが、日本の震度階級とはだいぶ異なっています。

まず、日本の震度判定に使われているのと同じように揺れの加速度を使います。それに加え、日本では使われない揺れの最大速度も使います。また、揺れの加速度の値には水平方向の揺れだけを使うので、垂直方向は無視し、日本では0.3秒以下の揺れの加速度は無視されるのに対し、アメリカの場合は(多分)最大値を使っているように見えます。

その上で、震度5以下は揺れの最大値を用い、震度7以上は揺れの加速度をを用います。震度6は揺れの最大値が震度5の基準(8.1センチ/秒=カイン)を超えるものの震度7の基準(176.58cm/秒/秒=ガル)は満たさないものになっています。

震度階級10で1216.44センチ/秒/秒ですから、単純に見ると震度7.11=気象庁震度7に相当しそうな気がしなくもないですが、日本の気象庁震度では0.3秒持続した加速度を使うので、たぶんもっと低いと思います。

揺れの単位

揺れ方を数字で表す場合、先のメルカリ震度階級にもでている、加速度と速度を用います。東日本大震災、十勝沖地震、新潟県中越地震、熊本地震で報道に出てきている長周期地震動は、今のところ階級が表示されるだけで具体的な数値として示されてはいません。

加速度の単位:ガル

加速度の単位で、センチ/秒/秒で表されます。加速度の単位なので、例えば200ガルが1秒だけあるとしたら、200センチ/秒(カイン)の揺れになります。

速度の単位:カイン

揺れの速度の単位です。日本では震度計算に直接使われることはありませんが、揺れの被害にはカインのほうが適合するという意見もあるようです。

気象庁震度階級

気象庁震度階級は明治時代に最初に制定されて以来改訂されながら使われています。1996年からは測定された揺れの加速度に基づいた震度階級が発表されるようになりました。最近では、通常の震度階級に加えて、長周期地震動の階級も発表されるようになっています。長周期地震動についてはまだ試行段階のようです。

震度階級の計算方法

地震波を3方向の成分に分けた後、加速度を周波数に分解して、高周波と低周波のノイズ除去の後再合成して合計0.3秒持続する値が震度計算に使われています。(参照:ウィキペディア「気象庁震度階級」

具体的な、計算方法はエクセルの計算式にすると、「=log10(0.3秒続く最大のガル)*2+0.94」を計算値として、小数点第3位を四捨五入した後小数点第2位を切り捨て(=第2位が9以外の場合は切り捨て、第2位が9で第3位が5以上の場合は切り上げ)して計測震度とします。震度5と震度6には弱と強があり、それぞれ震度5.0未満が震度5弱で震度5.0以上が震度5強、震度6.0未満が震度6弱、6以上が震度6強、と最終的な表示に変換されます。

全部合わせると、

=ROUND(ROUNDDOWN(ROUND(LOG10(0.3秒続く最大のガル)*2+0.94,2),1),0)&IF(OR((ROUNDDOWN(ROUND(LOG10(0.3秒続く最大のガル)*2+0.94,2),1)<4.5),(ROUNDDOWN(ROUND(LOG10(0.3秒続く最大のガル)*2+0.94,2),1)>=6.5)),"",IF(ROUNDDOWN(ROUND(LOG10(0.3秒続く最大のガル)*2+0.94,2),1)>=6,"強",IF(ROUNDDOWN(ROUND(LOG10(0.3秒続く最大のガル)*2+0.94,2),1)>=5.5,"弱",IF(ROUNDDOWN(ROUND(LOG10(0.3秒続く最大のガル)*2+0.94,2),1)>=5,"強","弱"))))

こんな感じになります。1セルだけで計算させると、長くなりますが、式は複雑ではない、はずです・・・

長周期地震動階級

通常の震度階級の他に、長周期地震動階級という長周期地震に対応した震度階級が新しく導入されています。この長周期地震動階級も、通常の震度階級と同じく、地表に設置された地震計で測定した地震波を元に計算されますが、長周期地震動階級の計算に使われるのは、絶対速度応答スペクトル(SVa)(減衰定数5%)という指標で、発表されるのは4段階です。

さっぱり意味がわからない専門用語です・・。ウィキペディア「応答スペクトル」に載っているのも相対速度応答スペクトルと絶対加速度応答スペクトルですが、それにしても、絶対・相対、応答、スペクトル、すべてわからない用語で残念ながら僕には理解不能です。1.5秒超8秒未満の振動周期のSVaが100cm/秒以上が長周期振動階級4になります。

気象庁のウェブサイトでは、

  • 地震時の人の行動の困難さの程度や、家具や什器の移動・転倒などの被害の程度を基に長周期地震動による揺れの大きさを4つの階級に区分した
  • 固有周期が1~2秒から7~8秒程度の揺れが生じる高層ビル内における、地震時の人の行動の困難さの程度や、家具や什器の移動・転倒などの被害の程度から4つの段階に区分した揺れの大きさの指標
  • その場所に高層ビルがあれば高層階でどのような揺れになるかを推計したものです。周辺の高層ビル等における建物内の被害状況把握の参考にできるものの、個々の高層ビル等の特性や地盤条件まで表現しているものではありません。また、高層ビルの中でも、階や場所によって揺れの大きさが異なります。特に、建物の頂部のゆれ方は、発表した長周期地震動階級よりも大きくなる場合もあります。

固有周期というのは、建物のサイズ・高さなどから決まる建物の特徴で建物によって異なる数字になります。イメージとしては、長くて太い音叉ほど低い音(周波数が低い=波長が長い)音を鳴らすという感じで、大きくて高層のビルほど長周期振動(振動周期が長い振動)の影響を受けやすく、高層ビルの被害の出やすさを示す指標です。

色々な建造物の固有周期

少し古そうなウェブサイトですが、一般的な木造建物や高層建築の固有周期が出ていました。

木造の固有周期は、平屋建てか二階建てか、新しいか古いかによって変わってくるが、ほぼ0.1秒から0.5秒までの範囲に分布している。平均的には、新しい二階建てが0.2秒前後、古い二階建てが0.3秒前後、平屋の場合はこれよりもやや短周期と考えれば良いだろう。
...中略...
3階あるいは4階建ての一般的なRC造(鉄筋コンクリート造)の学校建物の固有周期はどのくらいだろうか。学校建物は長方形のプランを持つ単純な形状が多く、ほとんど同程度の固有周期を持つと考えられるが、実際には表層地盤の硬軟により変わってくる。硬い地盤上にある学校建物の固有周期は0.2秒程度であるが、これが柔らかい地盤上にある場合は0.3秒から0.4秒に伸びる。
より一般的な建物を考えてみよう。固有周期は建物の高さが高くなるほど長くなる傾向がある。1次固有周期T(秒)と建物高さH(m)の関係式として次式がある。

  • T=0.02H (S造)
  • T=0.015H(SRC造・RC造)

この式は日本における建築物を対象にしており、設計基準の異なる他国の建築物については式中の係数も幾分異なってくる。(なお、式中のS造、SRC造はそれぞれ鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造を意味する。)上式によれば、新宿副都心に立ち並ぶ200m級の超高層建物(S造)の固有周期は約4秒と概算できるし、現在日本で最も高い横浜のランドマークタワー(高さ296mのS造)の固有周期は約6秒と概算できる。
...中略...
1995年兵庫県南部地震においても、周期1秒のパルス的な波が膨大な被害をもたらしたが、大破した構造物の大半は周期1秒よりも短周期の構造物であった。

出典:『強震動予測で対象となる周期範囲(大林組技術研究所 大堀道広)

ということなので、地盤によるものの長周期地震波震度階級で直接対象とされているのは大体30階建以上の高層建築です。ちなみに、同資料によると原子力発電所は硬い地盤に建てられているはずなので、(設計上の)固有周期は0.5秒以下になっているそうです。

また、長周期地震波で高層建築大きな被害があるとは言え、巨大地震の際に主な被害が起こるのは耐震性能がそこまで考えられていない普通の家屋だったり低層ビルのようですから、高層ビルで立っていられなくなったとしても、高層ビルのほうがまだ安全なのかもしれません。(窓ガラスが落ちてくるのは致命的ですので、高層ビルの近くは危険です)

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