給湯温度を60度以上に設定

New York Timesのサイトを見ていたら、「A Belated Look at New York’s Cooling Towers, Prime Suspect in Legionnaires’ Outbreak」という記事が出ていました。ニューヨーク市で最近おこっているレジオネラ症の流行で、ビルの冷却水を何とかしようという話でした。

レジオネラ症について、また、予防するための対策について調べました。

レジオネラ症

レジオネラ症というのは、日本でもかなり名前の通った感染症です。(だと思います)

別名、在郷軍人病、退役軍人病といわれていて、急激に進行する肺炎を起こします。国立感染症研究所の記述を一部改変して転載します。出典:『レジオネラ症とは』国立感染症研究所

レジオネラ症とは

レジオネラ症(legionellosis)は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を代表とするレジオネラ属菌による細菌感染症で、その病型は劇症型の肺炎と一過性のポンティアック熱がある。

レジオネラ肺炎は1976年、米国フィラデルフィアにおける在郷軍人集会(Legion)で集団肺炎として発見されたところから、legionnaires' diseaseと命名された。ポンティアック熱は、1968年に起こった米国ミシガン州Pontiacにおける集団感染事例にちなんで命名された。レジオネラ属菌は、もともと土壌や水環境に普通に存在する菌である。

しかしながら、快適な生活や水資源の節約のため、エアロゾルを発生させる人工環境(噴水等の水景施設、ビル屋上に立つ冷却塔ジャグジー加湿器等)や循環水を利用した風呂が屋内外に多くなっていることなどが感染する機会を増やしているものと考えられる。感染症法の施行以後、検査技術の進歩とあいまって、2013年には1,111例(暫定値)が報告された。

病原体に曝露された誰しもが発症するわけではなく、細胞内寄生細菌であるため、細胞性免疫能の低下した場合に肺炎を発症しやすい。

治療方法

細胞に浸透するニューキノロン、マクロライドなどの抗菌薬を使用する必要がある。静注用のニューキノロン系薬(製品名シプロキサン、パズクロス、クラビットなど)が第一選択剤である。有効な抗菌薬の投与がなされない場合は、7日以内に死亡することが多い。

細胞性免疫機能が低下したヒトでは肺炎を起こす危険性が通常より高いので、特に注意する必要がある。高齢者や新生児のみならず、大酒家、重喫煙者、透析患者、ガン/白血病患者・糖尿病・AIDS患者はハイリスク・グループである。

 レジオネラ菌が増える環境

循環式モデル浴槽におけるレジオネラ属菌の増殖をみると、一般細菌や従属栄養細菌の増殖の後に、それを補食するアメーバが増え、最後にアメーバの中で増えるレジオネラ属菌が増殖する。したがって、換水や洗浄により環境を清浄に保てばレジオネラ属菌は増殖しない。

浴槽水の清浄度や、浴槽壁にレジオネラ属菌が生息するバイオフィルムの程度を現場で検査するには、ATPの測定が有効である。測定値を一定以下にすることによりレジオネラの汚染率を低く保つことができる。

同様にレジオネラ属菌の増殖する20〜45℃を外して低温あるいは高温にして温度管理すればレジオネラ汚染を抑制できる。60℃以上ではレジオネラ属菌は殺菌される。

温度管理の他にエアロゾルの発生を抑制することも予防に重要である。エアロゾルの発生する可能性のある温水は、次亜塩素酸などの適切な殺菌剤による処理をおこない換水するなどの留意が必要である。

エアロゾルの発生する高圧洗浄、粉塵の発生する腐葉土の取り扱いなどにはマスクを着用して感染を予防する。最近、エアロゾルの発生する道路の水溜まりからの感染が疑われている。

 

ニューヨーク市でのレジオネラ症流行

サウスブロンクス地区(South Bronx)で今のところ86件の感染が報告されていて、7月10日からの約1ヶ月間で7名の死者が出ているようです。

Often described as a severe form of pneumonia, the disease can spread through air-conditioning units mounted in windows, exposed overhead pipes and other common features of urban life.
...中略...
In recent years, the country has seen a spike in legionella-related illnesses. The number of cases reported to United States public health authorities rose to 4,548 in 2013 from 1,127 in 2000, according to a 2015 medical journal article.
This year, the Centers for Disease Control and Prevention has reported about 2,400 cases of Legionnaires’ disease nationwide, with more than 130 of them in New York City.
出典:『A Belated Look at New York’s Cooling Towers, Prime Suspect in Legionnaires’ Outbreak』(The New York Times)

アメリカでの年間症例数は、5000件に満たない程度ですが、日本では年間1000件程度です。

感染源として、ビルの冷房に使われる冷却タワーの汚染が疑われています。日本では入浴施設での感染が有名ですが、初めてレジオネラ症が発見されたのもアメリカで原因も冷房施設の汚染と考えられています。

冷却タワーというのは、ビルの屋上によく設置されている

ビルの屋上にある冷却塔

こんなようなものです。日本のものは大抵綺麗に白く塗装されているような気がします。

記事では、窓に設置するタイプのエアコンや、頭上のパイプなどからも感染すると書かれています。アメリカの(特に古い)建物では、天井パネルが簡単に取り外せるようになっていて、上に水が流れるパイプが張り巡らされています。

そして、大抵はパイプに断熱材はついておらずむき出しなので、結露したり水漏れして、天井からぽたぽたと水がたれてきたり、水がたれた痕がくっきり見える建物がかなり多いです。商業施設などでは、パネルすらなくむき出しのパイプが見えることも良くあります。

20~45℃で増殖しやすいということなので、冷暖房関係は確かに危なそうです。

 

レジオネラ症の感染源

日本では、スーパー銭湯などの入浴施設での集団感染や、お湯を循環させるタイプの風呂が普及しているため、そこからの感染が有名です。

厚生労働省の資料を見ると、52%は不明、29%は浴用施設

最近のデータでは、感染症例の48%が原因が推定できていて、そのうち

  • 60%が入浴施設など
  • 6%がプール
  • 4%が加湿器

と圧倒的に入浴施設からの感染が多いことが見て取れます。(出典:神奈川県衛生研究所資料『家庭内におけるレジオネラ検出状況』厚生労働省ホームページより改変)

日本でビルのエアコン施設からの感染がほとんど確認されていない原因は、「建築物環境衛生管理基準」などによって毎月の点検、毎年の洗浄が義務付けられているからかもしれません。規制が多いのは嫌ですが、こういう規制はなくさないで欲しいですね。

レジオネラ菌に着目してアピールしている会社もありました。

同資料に、家庭内の汚染状況を調査した資料もついています。(資料名から分かるように、こちらのデータがメインです)

水周りと掃除機を調査レジオネラ汚染調査対象

調査対象にしているのは、水周り全般ですが掃除機も含まれています。このうち、レジオネラ菌が一切検出されなかったのは掃除機だけで、レジオネラ菌が水場に増えることを考えれば当然なのですが、風呂・洗濯機だけではなくホース、さらには台所や洗面所の蛇口の水からも一部検出されています。

こまめに掃除したほうが良いですね・・・。気をつけます。

65℃で死滅するので熱湯を出せば死滅するはずですが、養分が残っているとすぐに増えてしまいますので、やはり洗浄しないとだめだと思います。

データがしっかりとは示されていませんが、使用頻度が低い蛇口のほうが陽性率が高く、梅雨~夏場(7月)に採取した水以外では培養できるレベルの汚染はなかったそうです。

自動車も感染源かもしれない

国立感染症研究所のページで少し触れられていましたが、道路の水溜りからもレジオネラ菌が検出されることが知られていて、カーエアコンが感染源となりうるという話もあります。

レジオネラ症の隠れた感染経路、自動車の運転や雨天は危険因子か?』(国立感染症研究所 感染症情報センター)

一部抜粋すると、

  • 自動車リサイクル工場で回収された廃車のエバポレーターを調査したところ、22台中11台から同様にLAMP法でレジオネラ属菌が検出された
  • アスファルト道路上に形成された水たまり18検体を調査したところ、7検体からL. pneumophila が分離された

というようなデータを出されています。もともとありふれた菌ですから問題になるレベルに達していることは少ないと思いますが、カーエアコンが感染源とされる症例も報告されています。

 

レジオネラ症の予防

レジオネラ菌が繁殖するためには、汚れが溜まって細菌が増えてバイオフィルムを形成し、アメーバが増殖している必要があります。なので、水周りを清潔に保つことと、できれば循環型の風呂を使わないかしっかり管理すること、殺菌を行うこと、でリスクを減らすことができそうです。

洗浄・殺菌

特に温水を使う場所では、次亜塩素酸(ハイターなど)で時々殺菌しないといけません。洗濯機は専用の洗浄剤が売られていますので、時々使っています。蛇口の横に小さいシャワーがついているのですが、ここはプラスチック製で、よく見るとかなり危ない汚れ方をしています。日本では覗き込まないと見えなかったので気づかなかったのですが、水道の蛇口も時々はずして殺菌したほうが良いのではないかと思います。

加湿器は、洗浄がしにくい形状のものは避けるようにしています。アメリカの製品はかなり大雑把で大きすぎる面はありますが、食洗機対応だったりするので好きです。

ごしごしとたわしでこすると傷がついて駄目なので、やりすぎは禁物です。

水の出始めは捨てる

蛇口・給湯器からの水や、浄水器の水の出始め10秒を捨てるようにという記事(梅雨時が怖いレジオネラ菌!盛岡で1人死亡―家庭の「培養工場」お風呂・キッチン)を見つけました。繁殖していたとしても、できるだけ量を減らすためには有効かもしれません。

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