2015年6月16日、アメリカ食品医薬品局(FDA、Food and Drug Administration)が3年以内にトランス脂肪酸の使用を禁止する最終決定を出しました。

部分硬化油の全廃

FDAの最終決定は2015年6月ですが、2013年11月にすでに全廃方針が出されていました。既にアメリカの大手外食産業はトランス脂肪酸を含む部分硬化油(PHO;ショートニングなど)の使用を停止するなど、以前から準備をしています。

人工的トランス脂肪酸の除去ステップ

FDAの発表の要旨は、

  • 部分硬化油は安全とはみなせない
  • 3年間のうちに、全廃もしくは特別に使用許可をとれ
  • 2006年に、食品ラベルへのトランス脂肪酸含有量を義務化した
  • 2003年から2012年の間にトランス脂肪酸の摂取量は78%減少したが、公衆衛生のためにもっと減らす必要がある
  • 消費目安量は、「可能な限り少量
  • 現在の食品ラベルは、サービングサイズごとに0.5グラム以上の場合に表示

FDAのウェブサイトに出ている公式発表を下に載せておきます。。(一部改変しています。強調表示部はすべて管理人の改変です。)

The FDA takes step to remove artificial trans fats in processed foods

Action expected to reduce coronary heart disease and prevent thousands of fatal heart attacks every year

June 16, 2015

Based on a thorough review of the scientific evidence, the U.S. Food and Drug Administration today finalized its determination that partially hydrogenated oils (PHOs), the primary dietary source of artificial trans fat in processed foods, are not “generally recognized as safe” or GRAS for use in human food. Food manufacturers will have three years to remove PHOs from products.

 “The FDA’s action on this major source of artificial trans fat demonstrates the agency’s commitment to the heart health of all Americans," said FDA's Acting Commissioner Stephen Ostroff, M.D. "This action is expected to reduce coronary heart disease and prevent thousands of fatal heart attacks every year.”

This determination will significantly reduce the use of PHOs, the major source of artificial trans fats, in the food supply. In 2013, the FDA made a tentative determination that PHOs could no longer be considered GRAS and is finalizing that determination after considering public comments.

Since 2006, manufacturers have been required to include trans fat content information on the Nutrition Facts label of foods. Between 2003 and 2012, the FDA estimates that consumer trans fat consumption decreased about 78 percent and that the labeling rule and industry reformulation of foods were key factors in informing healthier consumer choices and reducing trans fat in foods. While trans fat intake has significantly decreased, the current intake remains a public health concern. The Institute of Medicine recommends that consumption of trans fat be as low as possible while consuming a nutritionally-adequate diet.

“Studies show that diet and nutrition play a key role in preventing chronic health problems, such as cardiovascular disease and today’s action goes hand in hand with other FDA initiatives to improve the health of Americans, including updating the nutrition facts label,” said Susan Mayne, Ph.D., director of the FDA’s Center for Food Safety and Applied Nutrition. “This determination is based on extensive research into the effects of PHOs, as well as input from all stakeholders received during the public comment period.”

The FDA has set a compliance period of three years. This will allow companies to either reformulate products without PHOs and/or petition the FDA to permit specific uses of PHOs. Following the compliance period, no PHOs can be added to human food unless they are otherwise approved by the FDA.

The FDA encourages consumers seeking to reduce trans fat intake to check a food’s ingredient list for partially hydrogenated oils to determine whether or not a product contains PHOs. Currently, foods are allowed to be labeled as having “0” grams trans fat if they contain less than 0.5 grams of trans fat per serving, including PHOs, the primary dietary source of artificial trans fat in processed foods.

Many companies have already been working to remove PHOs from processed foods and the FDA anticipates that many may eliminate them ahead of the three-year compliance date.

 

トランス脂肪酸とは何か?

農林水産省のウェブサイトに分かりやすい説明があるので、専門的なことや難しいことは、農林水産省の参考ページをご覧ください。(参考『すぐにわかるトランス脂肪酸』農林水産省)

トランス脂肪酸というのは、「あぶら」を分類する言葉の一つです。なじみがある油は、サラダオイルやオリーブオイルなどの植物性油、ラードや牛脂といった動物性脂肪、マーガリンやショートニングなどの部分硬化油に分けられます。このうち、トランス脂肪酸を多く含むものは部分硬化油で、牛脂にも含まれますが微量です。

一方、健康診断では、トリグリセリド(検査ではTGなど、中性脂肪)やコレステロール(同Chol、TCholなど)、LDL、HDLなどの項目が血中の脂肪分として検査されます。中性脂肪を形作っているものが、「脂肪酸」といわれエネルギー源になるものです。

動物性脂肪は飽和脂肪酸が多く、(一部を除き)植物性脂肪は不飽和脂肪酸で出来ています。飽和脂肪酸の特長は常温で固体であることで、不飽和脂肪酸は常温で液体です。常温で液体の不飽和脂肪酸を加工し、常温で固体になるようにしたものが部分硬化油といわれ、トランス脂肪酸を多く含んでいます。

加工してあるため、最近は「水素付加」をするためにプラスチックを食べているんだ!と批判されることがありますが、僕が子供の頃は「植物性だからバターよりもマーガリンが良い」とすりこまれていました。高校生ぐらいだったか、「実は体に良くない」説があると聞いたことがあったような気がします。気になって、片手間に医学論文を探してみたのですが今のところあまり良いものが見つかりません。

立体異性体

不飽和脂肪酸は、付加された水素原子の位置によってシス脂肪酸とトランス脂肪酸に分けられます。シス—トランスというのは立体異性体といわれるもので、化学式にすると同じですが性質が違っています。生体内で合成されるときにはシス脂肪酸が出来るのですが、化学的に水素付加を行うとトランス脂肪酸も出来てしまいます。

トランス脂肪酸が多い食品

上記農林水産省のページで画像入りで紹介されている食品は、

菓子パン、マーガリン、ポテトスナック、ポ*キーのような加工食品です。ただし、これらに限らず部分加工油を使うと食感がよくなるので、揚げ物全般やクッキーなどの洋菓子に多く含まれます。

 

外食産業の取り組み

アメリカでは、2013年以降にはマクドナルドやバーガーキング、ケンタッキーフライドチキン、ウェンディーズなどのチェーン店では部分硬化油の使用を取りやめています。カリフォルニア州やニューヨーク州では独自の規制を設けていて、加工食品や外食でのトランス脂肪酸使用が規制されています。

Do your products contain trans fat?

Yes, some of our products do contain trans fats. Some of those trans fats occur naturally in foods like beef and chicken. Some of those trans fats are artificial and in recent years, we've worked to reduce artificial trans fats in many of our menu items. 
出典:『Our food. Your questions.』(McDonald)

全食品にトランス脂肪酸含有量表示が義務付けられているのですが、この記事を書き始めるまで、0.5g以上のみ表示ということを知りませんでした。サービングサイズごとに0.5gということは、たとえばポテトチップス28gに0.5gも入っているとはとても思えないので、袋半分食べたら超過していることは十分ありえるのです。

トランス脂肪酸を多く含む食品たち

トランス脂肪酸が多い食品としてよく挙げられているMcDonaldのバーガーの表示を見ると、クォーターパウンダーチーズはアメリカのサイトでは1.5gと表示されています。日本のものもエネルギー表示は大体似通っていますので、同じくらい含んでいるかもしれません。

参考ウェブサイト:『All the foods that contain trans fats, the massively unhealthy ingredient the FDA just banned』『Thanks to the FDA Trans Fat Ban, You May Never See These Foods Again

他にもファストフードには多く含まれるものがあります。中には、朝食のサンドウィッチ一つで6gというものもありました。ぱっと見ではわからないので怖いです。(参考:『America’s Least Healthy Fast-Food Chains』) ただし、同じチェーンでもカリフォルニアの店では入っていないものが売られています。

上記のようなチェーン店はウェブサイトで公開していますが、普通のレストランでは表示されていません。また、特にトランス脂肪酸が多いとされている冷凍ピザやマーガリンも市販品ではトランス脂肪酸ゼロと記載されています。

特に、マーガリンは多く含まれているはずで、Wikipediaによると従来製法のマーガリンでは227g中33.8g(量にして14.9%)でしたので、サービングサイズ14g中2g入っている計算になります。最近のマーガリンはトランス脂肪酸の含有量が少ないものに切り替わってきているという話で、日本のものでは0.5%(14g中0.07g=0.5g未満=アメリカでの表示はゼロ)のものもあるようです。また、2003年以降に原料をパーム油に代えたマーガリンが開発され、トランス脂肪酸が減ったようです。

現在の、パーム油から作ったマーガリンが部分硬化油に含まれるのかは不明です。

他にも、レストランで出てくるサラダにトランス脂肪酸が!とかいう話が色々あるのですが、どこまで本当なのかわかりません。シーザーサラダに2g、ハニーマスタードドレッシングに3gとか・・・本当なんでしょうか?(参考:『How Much Trans Fat Is in Restaurant Foods?』)

 

日本では、

日本においてトランス脂肪酸低減を発表している企業

  • セブン&アイ・ホールディングス - 2010年12月26日、オリジナルパンに限りトランス脂肪酸を含む商品のトランス脂肪酸を低減した方針を明らかにした[23][24]。
  • フランソア - いくつかの商品ブランドでワンサービング(1食:55g)あたり0.5g未満に低減[25]。
  • pasco - 2006年2月より、パンや菓子に使用する油脂(マーガリン、ショートニング)をトランス脂肪酸の含有量が少ないものに順次切り替えを行なっている。
  • 神戸屋 - 使用する油脂などの見直しにより低減[26]。
  • モスバーガー - パーム油と菜種油でありショートニングは使用していない[要出典]。
  • ロッテリア - パーム油100%でショートニングは使用していない[27]。
  • 日本ウェンディーズ - 米国と共同歩調で2006年10月から全79店舗でトランス脂肪酸を含んでいない油に切り替えた[要出典]。
  • ミスタードーナツ - 2007年12月より油脂を切り替え、ドーナツ1個当たり平均1?1.5g含まれていたトランス脂肪酸を、平均約0.25gまで低減[28]。
  • ケンタッキーフライドチキン - 2007年10月にトランス脂肪酸の含有量を半減させた調理油に切り替え、今後も含有量をゼロにする油の研究を進めていくと発表[要出典]。
  • 日清オイリオグループ - トランス脂肪酸への対応として、日本国内には基準がないもののアメリカ食品医薬品局(FDA)において「一食当たりトランス脂肪酸が0.5g未満(油脂の場合100g当たり3.5g未満)の場合に0gと表示できる」とする基準があり、既にその水準を達成している(製造過程で水素添加を施した一部の業務用商品を除く)」とアナウンスしている[29]。
  • ブルボン - 全商品の低トランス酸化(1サービング40gあたり0.5g以下)[30]。

出典:『トランス脂肪酸』(ウィキペディア 最終更新 2015/6/18 13:56)

などの企業が対策を発表していますが、他の企業は不明ですし、政府も規制する気はないようです。

 

日本人のトランス脂肪酸摂取量

日本生活習慣病予防協会のウェブサイトに、2004年の統計が載っていました。概ね、政府の主張に近い感じです。それによると、

  • 日本人の一日あたりのトランス脂肪酸消費量は0.7g(摂取エネルギーの0.3%)か1.3g(0.6%)
  • アメリカ人の一日あたりのトランス脂肪酸消費量は5.8g(2.6%)

(参考『トランス脂肪酸の摂取量は適正 食品安全委員会』日本生活習慣病予防協会)

で、WHOの推奨は摂取エネルギーの1%未満だそうですので影響は少ないだろうという主張です。

2012年食品安全委員会公表の資料「「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書の概要」を見ると、日本人のうちトランス脂肪酸の消費が多いほうから5%の人の摂取量が0.7%~0.75%だということも出ています。

アメリカFDAの発表では、2003年から2012年までの間にトランス脂肪酸の消費を78%低減した、とあります。1年違いますがそのまま当てはめてみると、

  • アメリカ人の一人あたりのトランス脂肪酸消費量は1.27g(不明)

となります。

もっと詳しい資料があるかもしれませんが、今はひょっとしたら日本人のほうがトランス脂肪酸を食べているのかもしれません・・・

同じ食品安全委員会資料「「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価」」22ページを見ると、日本人は摂取量が増えているようにも見えるのです。

 

部分硬化油の代用品

代用品として使われる可能性があるものは、

  • ラード
  • パーム油
  • ココナッツ油

などです。パーム油は植物性なのですが、ラードと成分が似ているといわれてて、健康に良いとはいえないと評価されています。

ココナッツ油は、健康に良いとブームになっているようです。一度揚げ物をしてみたのですが、ちょっと油のにおいが気になりますがおいしく出来たので良かったです。油には変わりないので気をつけなくてはいけないかもしれません。

パーム油はアブラヤシから採れる油ですが、アブラヤシは世界でもっとも多く栽培されている植物の一つで、部分硬化油の代用品としては、たぶんパーム油が使われるのでしょう。

 

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