2015年10月5日にTPP交渉が合意してから1ヶ月が経ち、日本政府から合意文書の概要が公表されました。気になっていた医療分野は、新規医薬品の独占販売期間規定があったくらいで、他にそれらしい項目は見つけられませんでした。

本当に気になる方は日本語以外も読むべきです。翻訳で大事な部分が変わりますし、公式文書は英語、スペイン語、フランス語です。

トップの画像は、「Liberty Facing Tidal Wave of Trade Aggreements」というタイトルの画像を加工したものですが、日本語的に言えば「TPPの黒船にアメリカの自由が飲み込まれるぞ」という感じです。日本を含めたほとんどの国では「アメリカに飲み込まれるぞ!」と警戒しているというのに。

TPP文書

日本政府から公表された文書はPDF『環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の全章概要』として内閣官房のウェブサイト上にアップロードされています。

全文は、同日11月5日にニュージーランド政府のウェブサイト上の特設ページに公開されています。

ニュース記事

全文公表に伴って、いくつかニュースになっています。引用つきで載せておきます。

  • 車輸入で米・カナダに特例…TPP全章判明(読売新聞 via Yahoo!)—環太平洋経済連携協定(TPP)で、米国、カナダが日本からの自動車輸入が急増した場合に対応できる特別なルールが盛り込まれていることが分かった。自動車完成車について、輸入が急増した際に緊急的な関税引き上げを認める「セーフガード」の利用可能期間がTPPに認められた一般的なルールに比べ、アメリカで10年、カナダで12年延長される。両国に対しては通常は1回とされる発動回数の制限も設けない。
  • TPP、遺伝子組み換えで情報共有部会 全文公表で判明(朝日新聞デジタル via Yahoo!)—「食の安全」から関心の高い、大豆などの遺伝子組み換え(GM)作物については、情報交換のための作業部会をつくることなどが新たにわかった。...中略...輸入国の要請があれば、輸出国でGM作物をつくる企業へ情報共有を奨励する規定もある。生産量や貿易量が増えると見込まれるなか、安全を気にする消費者にも配慮して、情報共有を深める場をつくったと言える。ただ、米国などがさらに市場開放を求めてくる可能性もある。

 なお、米の輸入枠や著作権法など事前に関心が高かった部分は、新しいニュースは今のところ出ていません。

気になった条項

ざっと見ていて気になった条項を、日本政府の『環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の全章概要』から抜き出します。下線・強調、改行、空白除去などの改変を行っています。下線部分が気になった部分です。

郵便保険事業体による保険の提供(第11章附随書)

 いずれの締約国も、郵便保険事業体の一般公衆への直接の保険サービスの引受け及び提供について、自国の市場において同種の保険サービスを提供する民間のサービス提供者と比較して郵便保険事業体が有利となるような競争上の条件を作り出す措置を採用し、又は維持してはならないこと、郵便保険事業体による保険サービスの提供に関して、民間のサービス提供者による同種の保険サービスの提供について適用する規制及び執行活動と同様のものを適用すること、郵便保険事業体に対し、当該保険サービスの提供に関する年次財務諸表(同種のサービスを提供する株式が公開された民間企業について締約国の領域において適用される一般的に認められている会計及び監査原則等を満たすものとする。)を公表することを要求すること、及び締約国は、パネルが附属書に規定するいずれかの約束と適合しない措置を当該締約国が維持していると認める場合には、申立国に通報し、協議を行う機会を与えること等を規定。

かんぽ生命つぶし?

民営化され上場も果たしたので財務諸表とかは大丈夫そうですが、有利になる措置を禁止とされています。昔は郵便局といえば「かんぽ」の広告がいっぱいでしたが、最近はきっと変わっているのでしょうね。それなら問題ないのかもしれません。

公衆電気通信サービスのサービス提供者に関する義務(第13.5条)

各締約国は、自国の領域内の公衆電気通信サービスのサービス提供者が他の締約国の公衆電気通信サービスのサービス提供者に対し相互接続を要求する権限を与えること、自国の領域内の公衆電気通信サービスのサービス提供者が、質及び信頼性を損なうことなく、一定の条件の下で番号ポータビリティを提供することを確保すること、及び自国の領域において設立された他の締約国の公衆電気通信サービスのサービス提供者が、差別的でない原則で電話番号の使用が認められることを確保すること等を規定。

電話番号や帯域の割り振りは?

日本では総務省が電話番号の割り振りや帯域割り振りを決めていますが、他国の業者が電話番号の使用を認められるようになる条項のようです。新規参入してくるかもしれませんが、「自国の領域において」とあるので、日本の身分証確認のような規制はそのまま継続できると思われます。

ソフトバンクのように他国進出できる企業が、他にも出てくるといいですね。

ソース・コード(第14.17条)

いずれの締約国も、他の締約国の者が所有する大量販売用ソフトウェア又は 当該ソフトウェアを含む製品の自国の領域における輸入、頒布、販売又は利用の条件として、当該ソフトウェアのソース・コードの移転又は当該ソース・コ ードへのアクセスを原則として要求してはならないこと等を規定。

中国・インドへのけん制?

中国は外国企業に対して、ソフトウェアのソースコードの提供を義務付けています。コンピュータプログラムは、内部がブラックボックス化していて、ブラックボックスの中身を解析しようとすること(逆アセンブル、リバースエンジニアリング)はライセンスで禁止されていることが多いです。

ライセンスで禁止されていてもやっていないというわけではありませんが、結果得られるものは普通の人間には理解が出来ないものなので、人間が理解できる形にして再利用するにはコストと時間が掛かります。それを、中国の場合は中国政府にソースコードを提供することを義務付けています。(参考:『中国に続いてインドも海外メーカーに「ソースコード」の開示を義務付け、ブラジルも検討中』Gigazine 2011年)

中国などが後から加入交渉をすることがあるとしたら、この条項は重要かもしれません。

調達計画の公示(第15.7条)

調達機関は、対象調達ごとに、附属書に掲げる適当な紙面又は電子的手段に より調達計画の公示を行うこと、締約国は、調達計画の公示に英語を用いるよう努めること等を規定。

努める≠義務化ではある

日本語ではなく英語を使うように努力せよとのことです。後々問題になりそうな予感がします。

国有企業及び指定独占企業章(第17章)

国有企業の定義(主として商業活動に従事する次のいずれかの企業をいう。

  • 締約国が50%を超える株式を直接に所有する企業
  • 締約国が持分を通じて50%を超える議決権の行使を支配する企業
  • 締約国が取締役会等の構成員の過半数を任命する権限を有する企業)

主に新興国に対する規定

主に新興国がとる自国優遇政策に対する規定ですが、日本の独立行政法人やNTT/NHK/JR/JTなどはどういう扱いになるのでしょうか?

August 2017
Mo Tu We Th Fr Sa Su
31 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 1 2 3

ログイン(DISQUS/Facebook/Twitter/Google)なしでもコメントでき、その場合管理人の承認後表示されます。