2014年初頭に理化学研究所・ハーバード大学のチームから発表され一躍注目を浴びたSTAP細胞について、最初の論文が掲載されたのと同じ「Nature」誌に、事実上STAP細胞を否定する論文が2報掲載されました。

STAP細胞

STAP細胞は、Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cellsと名付けられた細胞の略称で、日本語では刺激惹起性多能性獲得細胞です。ウィキペディアのSTAP細胞の項目を見ると、

刺激惹起性多能性獲得細胞(しげきじゃっきせいたのうせいかくとくさいぼう、英: Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells)とは、動物の分化した細胞に弱酸性溶液に浸すなどの外的刺激(ストレス)を与えて再び分化する能力を獲得させたとされる細胞。その英語名から一般にはSTAP細胞(スタップさいぼう、STAP cells)と呼ばれる。この細胞をもたらす現象をSTAP現象、STAP細胞に増殖能を持たせたものをSTAP幹細胞、胎盤形成へ寄与できるものをFI幹細胞と呼ぶ。
2014年1月に小保方晴子(理化学研究所)らが、チャールズ・バカンティ(ハーバード・メディカルスクール)や若山照彦(山梨大学)と共同で発見したとして、論文2本をネイチャー(1月30日付)に発表した。発表直後には、生物学の常識をくつがえす大発見とされ、小保方が若い女性研究者であることに注目した大々的な報道もあって世間から大いに注目された。
しかし、論文発表直後から様々な疑義が指摘され、同年7月2日に著者らはネイチャーの2本の論文を撤回した。その後も検証実験を続けていた理化学研究所は、同年12月19日に「STAP現象の確認に至らなかった」と報告し、実験打ち切りを発表。同25日に「研究論文に関する調査委員会」によって提出された調査報告書は、STAP細胞・STAP幹細胞・FI幹細胞とされるサンプルはすべてES細胞の混入によって説明できるとし、STAP論文はほぼ全て否定されたと結論した。
出典:『刺激惹起性多能性獲得細胞』(ウィキペディア 最終更新 2015/9/24 00:06)一部改変しています

酸性溶液処理

STAP細胞が画期的な発見とされて注目を浴びた理由は、同じくウィキペディアより、

遺伝子の導入などによらず、外的刺激を与えることのみで、動物細胞の分化した状態を無効にして初期化(リプログラミング)し、万能細胞にすることはできないとされていたため、STAP細胞の発見は生命科学の常識を覆す大発見とされ、細胞初期化原理の解明や医療への応用が期待された。ここで外的刺激とは細胞を弱酸性溶液(pH5.7)に短時間浸すというような簡単な処理であるとされた。
出典:同ウィキペディア、一部改変しています

先行するES細胞(2007年ノーベル生理学医学賞)やiPS細胞(2012年ノーベル生理学医学賞、山中伸弥教授)遺伝子操作を経ずに万能細胞(多能性幹細胞)を造ることができ、さらにより早く、簡単な操作だという点で画期的な論文でした。

騒動の全容については、ウィキペディアやまとめサイトなどいろいろな処にあります。

再生医療

ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞は、学問としての医学研究にも用いられますが、ヒトの臓器を生体外で創り出し移植に使うということを最大の目標に研究されています。

生体外で培養するといっても、細胞培養には「血清」という成分が必要でした。以前から無血清培地で細胞培養をする取り組みはあったのですが、最近無血清でiPS細胞を培養することもできるようになってきています。

血清というのは、血液から血球と凝固成分(血が固まるための成分)を除いた部分のことで、一番多く用いられているのは、ウシ胎児血清です。名前の通り、ウシを屠殺して胎児を殺して採取するものです。だいぶ前のデータですが、2008年時点で世界で70万リットル販売されていたそうです。現在はもっと多いのではないかと思います。

70万リットルが何頭分なのか定かではありませんが、

  • 一頭から取れる血液量は200mLから2000mL
  • 800mL入りの袋は大体1~3頭分

というデータがありました。血液の大体4割~5割未満が血清となるので、平均の血液量400mL位とすると、年間350万頭に上ります。ただし、これらの母牛が胎児をとる為だけに屠殺されるのかわからないのと、日本国内だけでもウシの屠殺数は、年間120~400万頭(見るページによって異なる)で、世界全体では年間1億頭以上とされているようなので、この数字が大きいか小さいかはなんともいえません。

科学誌「Nature」

Natureは、イギリスの出版社が発行する総合科学誌で、世界でももっとも権威ある科学誌の一つです。

2014年のSTAP細胞論文は、理化学研究所とハーバード大学のグループからNature誌に発表されましたが、今回のSTAP細胞を否定する論文もまた、Nature誌にハーバード大学のグループと理化学研究所から発表されました。

原論文は2014年7月にはすでに撤回されています。撤回後1年たって撤回済の論文に対して新たに反論する論文がでるというのは異例のようです。それだけ世間の注目だけではなく、医学会からの注目も高かったということでしょう。そういえば、最初の論文が出た週には、僕のいるラボでも話題に上っていました。

2014年の原論文

2015年9月の反証論文

ハーバード大学がまとめた再現性が得られなかったとする論文と、理化学研究所などに残っていたSTAP細胞を調べなおした結果をまとめた理化学研究所からの論文です。

いずれも短信で、どちらの内容も論文もこれまでに発表・報道されていたものですが、科学論文の形でまとめられました。

理化学研究所の論文では、2014年末に発表された通り、STAP細胞のサンプルは全てES細胞が混ざっていた(contaminated)のと、STAP細胞から作られたというハツカネズミはES細胞の効果でできたものだったと結論付けられていました。

再現性がなく、元の論文で使われていた完成「STAP」細胞がES細胞(胚性幹細胞)が混ざっていたためだと言っていますので、二つあわせるとSTAP細胞と呼ばれていたものが存在していた証拠はない、ということになります。存在し得ないということではありませんが、もし次に同じような細胞が出てきたら別の名前を付けられるでしょうし、「STAP細胞は否定された」といって良さそうです。

September 2017
Mo Tu We Th Fr Sa Su
28 29 30 31 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 1

ログイン(DISQUS/Facebook/Twitter/Google)なしでもコメントでき、その場合管理人の承認後表示されます。