アメリカのファストフードの中に、「チポトレ メキシカン・グリル」(Chipotle Mexican Grill)というところがあります。最近、人気が高まっていて顧客満足度調査で首位争いをしています。

ヒラリー・クリントン氏が大統領選挙への出馬を表明したあとに、「チポトレ」で食事をしている姿がニュースになっていました。このチポトレに対して、集団訴訟が起こされました。

チポトレ

チポトレというのは、メキシコの調味料の名前で乾燥させて燻製にした唐辛子です。

生の唐辛子は腐敗しやすいため、長期間保存するためには乾燥、酢漬け、オイル漬けなどの方法が用いられる。 チポトレは、熟した唐辛子を乾燥したうえ燻煙することによって、長期間の保存を可能にしただけでなく、独特の香ばしさが加味された食品である。 メキシコでは、チポトレは熟したハラペーニョから作られる。アメリカ合衆国ではハバネロを燻製にした辛味のより強いチポトレも販売されている。乾燥したチポトレはそのまま使う他、酢漬けにしたりトマト、酢、唐辛子をベースとしたアドボソースに漬けたものを用いることもあり、後者は缶詰として市販されている。 チポトレの味は、単に辛いだけではなく、ドライフルーツの味、赤糖の甘さ、燻製味、たばこ、チョコレート味、マッシュルーム風味などと表現されることがある。 風味豊かなチポトレは料理との相性がよく、肉類、魚介類のほか、パスタ、柑橘類やサワークリーム、マヨネーズ、アイオリソースともよく合う。 日本人の場合、チポトレの風味を「鰹節のような」と表現することが多い。
出典:『チポトレ』(ウィキペディア 最終更新 2014/11/8 05:30)

ウィキペディアを読むと、美味しそうな調味料です。辛いですが。

チポトレ・メキシカングリル

アメリカで食べられる食事の中で、僕はメキシコ料理が一番好きです。(参考記事『外食先に選ぶレストラン』)

メキシコの代表的な調味料であるチポトレを名前にした、チポトレ・メキシカングリルは全米に展開しているチェーンレストランで、(たぶん)ファストフードの部類に入ります。メキシコ料理のファストフードで日本で知名度が高いものは、「タコベル」だと思います。タコベルもメキシコ料理のタコスを彷彿とさせるネーミングですが、最近はチポトレのほうが人気が高いです。

タコベルは普通のファストフードですが、チポトレを始め最近人気が高いメキシカン・ファストフードは少し違います。カウンターに米、豆、肉・野菜、サルサソースなどが並んでいて、目の前でタコ・サラダにしてもらったり、ブリトー(柔らかいタコスで包んだもの)やケッサディーラ(ケサディラ、厚めのタコスにチーズと一緒に包んで両面を挟んで焼いたもの)などを作ってもらいます。

G-M-Over

なんとなく食材に気を使っていますよという雰囲気を出していたチポトレですが、2015年4月27日に食材から遺伝子組み換え食品(GMO:Genetically Modified Organism)を排除するという宣言をしていました。

Chipotle is on a never-ending journey to source the highest quality ingredients we can find. Over the years, as we have learned more about GMOs, we’ve decided that using them in our food doesn’t align with that vision. Chipotle was the first national restaurant company to disclose the GMO ingredients in our food, and now we are the first to cook only with non-GMO ingredients.
出典:『G-M-OVER IT』(チポトレのサイトより)

「外食チェーンとしては、初めてGMOを使っていることを公にしていたチポトレが、最近の知見から、GMOを使わないことを決めた」というような書き出しから始まっています。

チポトレへの集団訴訟

今回明らかにになった集団訴訟は、「GMOを使わないと宣言したのに、肉や乳製品を作るための飼料にGMOを使っているのは顧客を騙す行為だ」という趣旨で起こされたようです。

A new lawsuit claims that Chipotle still serves lots of items made with GMOs — despite advertising itself as GMO-free.

In April, Chipotle announced with great fanfare that it would no longer serve food made with genetically modified ingredients. On Monday, a law firm filed a class-action lawsuit in federal court claiming that the Mexican-style, fast-casual chain’s marketing is misleading and deceptive because it still sells lots of foods made with GMOs.
出典:『This lawsuit claims Chipotle has been deceiving customers』(Fortune)

が、前出のチポトレ公式サイトを読んでいくと、

WHAT ABOUT BEVERAGES AND ANIMAL FEED?

The meat and dairy products we buy come from animals that are not genetically modified. But it is important to note that most animal feed in the U.S. is genetically modified, which means that the meat and dairy served at Chipotle are likely to come from animals given at least some GMO feed. We are working hard on this challenge, and have made substantial progress: for example, the 100% grass-fed beef served in many Chipotle restaurants was not fed GMO grain—or any grain, for that matter. Many of the beverages sold in our restaurants contain genetically modified ingredients, including those containing high fructose corn syrup, which is almost always made from GMO corn.

出典:前出のチポトレページ

と、「飼料にはGMOを使っているけれど、たとえば多くのレストランで提供されている牛肉はGMOを使わないようにしていて、努力しているよ」と書かれています。

前述のFortune記事には、

In news reports at the time of the announcement, the company made clear that some of its ingredients are still made with GMOs. And at the bottom of the company’s Web page devoted to the topic is this disclaimer:
出典:前出Fortune記事

と書かれていますので、最近付け加えられたものではなく、最初から宣言されていました。そうすると、何がどう騙していることになるのか、ちょっと合点がいきません。

GMOとオーガニック

おそらく、GMO大国でありながらオーガニック大国でもあるアメリカで、GMOとオーガニックについての理解が低いからではないかと思います。

遺伝子組み換え生物:GMO

GMOのうち、食品として商業化されているものは主に作物です。殺虫成分を作る作物や、除草剤に耐性を得る作物が広く栽培されています。チポトレのサイトに書いてあるところでは、2014年の時点でアメリカで栽培されるトウモロコシの93%、大豆の94%がGMOだそうです。

実験室で使うような遺伝子組み換えネズミやサカナなどの生物や細菌なども、GMOです。

NON-GMO

日本でもある程度同じ傾向があると思いますが、GMOを長期摂取したときの健康被害への懸念が高まっています。収穫されるトウモロコシや大豆のほとんどはGMOですが、GMOではない食物、NON-GMOを求める人も増加傾向です。

買い物に行くと、NON-GMOと書かれている加工食品が結構あります。共通のラベルを使用していて、

NON-GMO labelNON-GMO

こんな感じのものです。これは、認証組織があって審査されたものに付けられています。

ただし、このNON-GMOにしても、0.9%までの含有が認められています。(欧州基準を参考にしたようです)

オーガニック

日本では一般的に有機栽培と呼ばれるオーガニック食品は、アメリカでは認証を得たものしかオーガニックと呼ぶことができません。日本では、「有機JAS」という規格があって認証を得ていないものは「有機」として販売することができません。

日本の「有機」 とアメリカの「オーガニック」は、使える農薬の種類が少し違いますが相互に認めています。オーガニックの認定を受ける条件の一つが、GMOではないこと、になっています。そのため、表示されていなくても、オーガニック食材はすべて遺伝子組み換えではありません。

肉類や酪農製品は、それ自体がGMOではないことに加えて、オーガニックの飼料を与えて抗生物質やホルモンの類を使っていないものがオーガニックの肉・酪農製品になります。

NON-GMOの肉・乳製品

オーガニックではない飼料を食べた牛やニワトリでも、牛・ニワトリ自体が遺伝子組み換え生物で無い場合はオーガニックではありません、NON-GMOです。そのため、チポトレのページで書いているように、ニワトリの餌がGMOでもニワトリ自体がGMOでなければ、NON-GMOの食材です。

集団訴訟では、NON-GMOを強調しているのに肉類・乳製品がGMO飼料を使っているのが消費者を騙す行為だと指摘しているのですが、かなり言い掛かりのような気がします。訴訟大国アメリカを感じる訴訟です。どうなっていくのか興味があります。

「チポトレ」は民主党支持者が多く利用する店舗ですので、大統領選挙に関連している、かもしれません。選挙のたびに、いろいろな組織の嘘や汚職が対立陣営に暴かれて糾弾されるというのは、アメリカの美点でもあるような気がします。

August 2017
Mo Tu We Th Fr Sa Su
31 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 1 2 3

ログイン(DISQUS/Facebook/Twitter/Google)なしでもコメントでき、その場合管理人の承認後表示されます。