日本の財務省が、国公立大学の学費値上げを提案というニュースを見かけました。

財政制度等審議会の提案

財務相の諮問機関である、財政制度等審議会が2015年5月11日の平成27年度第3回会議で国公立大学の学費を私立大学並みにしたらどうかという提案を行ったというニュースが出ていました。

財務省は、教育環境を改善するため国立大学の授業料引き上げも含めて検討するよう提案した。また、救急搬送の一部有料化検討も打ち出した。
 国立大学・大学院(86法人)の授業料標準額は年53万5800円。自主判断で値上げ(上限2割)や値下げ(下限なし)が可能だが、値上げは2研究科(大学院)にとどまる。
 同省は値上げの場合に増える各大学の収入を、「教育環境の改善や低所得家庭の学生支援に振り向けるべきだ」(幹部)と話している。値上げの対象は富裕層に限定される見込みだが反発が生じる可能性もある。
出典:『国立大授業料、値上げを=救急車、一部有料も—財務省』(ウォールストリートジャーナル:記事の掲載が終了しました)

参考ニュース:『財務省が「国立大の授業料」の値上げを提案!私立大近くまで引上げ』(IRORIO)

 

国立大学法人

国立大学法人は、平成16年(2004年)から始まった制度で、文部科学省主管の「国立」大学が国立ではなくなり、毒実採算を求められるようになりました。国からの補助金のうち、運営費交付金は漸減していくことになっています。

もう一つの国からの補助金(と呼んで良いのかわからない)科学技術研究費(通称:科研費)は大きくなってきています。大きくなってきてはいますが、競争的資金(獲るのに、審査がある)であるのと同時に、国の方針に従って重点配分されているために、財政が苦しくなっている大学も多いのかもしれません。(科研費は研究費を獲った教員に直接入る直接経費と、主に大学の運営費を賄う間接経費があります)

 

大学の運営費に占める学費の割合

国立大学の収入に占める、学費の割合を見てみました。とりあえず、東京大学のウェブサイトを見てみると、

平成25年度

  • 授業料+入学金+入学試験料 14,770百万円(=147.7億円)
  • 合計   245,984百万円(=2459.84億円)

6%しかありません。これを上げようということのようです。京都大学も総額が1700億円程度ですが、割合は同じような感じでした。

地方の大学に目を向けると、

平成25年度

  • 授業料5,103 + 入学金 748 + 入学試験料 169百万円(=60.2億円)
  • 合計   42,266百万円(=422.66億円)

と14%を学生からの納付金が占めていました。

ただし、東京大学・京都大学などの予算には科学技術研究費などが入っていて、収入・支出ともに同額で予算を組んでいるというよく分からない分配になっています。

東京大学の平成24年度収入・支出予算というところを見ると、産学連携等研究収入および寄付金収入、科学研究費等補助金、施設整備費、の3つで収入の約4割あって、同額を支出として組んでいるので、大学の自由になる資金の中で学生から収入が占めている割合は低くありません。

むしろ、大学の収入は国からの補助金を除けば、大学病院と学生からしかありません。

 

国立大学の学費引き上げ?

国立大学は、今でも一応は学費を決めることが(制度上は)出来るようです。学費を上げることで、独自性のある大学にするためのお金が捻出できそうです。

情報が正確か分かりませんが、「国立大学の入学者は富裕層が多い」のであれば上限を上げること自体は叩かれている程には問題がないのでは、と個人的には思います。

日本の大学学費』の記事(情報ソースは『国立大学の授業料免除』馬坂コム)で取り上げているように、今のところ学費免除があるようですし。どこか、追随せずに学費が安いことも売りにするような大学も出てきて欲しいなと思います。受験日程が画一化されている現状では効果がないかもしれませんが。

 

ただ、この提案をした人たちは、「富裕層なら何歳まで親のすねを齧らせても良い」と言っているのでしょうか。学費が1.5倍では、大学へ行く人はともかく、大学院進学率は激減しそうな気もしますので、学費が上がったら収入が下がりそうですね。

 

財政制度分科会の資料

財務省のウェブサイトから、今回話題になった財政制度等審議会の資料らしきものを見ることが出来ます。(参考:『財政制度分科会(平成27年5月11日開催)資料一覧』財務省ウェブサイト)

授業料に該当しそうな部分は、

(財務省資料より一部のみ抜粋)

 ですが、それを導くのに、

  • 18歳人口は減少傾向にあり、今後もその傾向が続くものと予想されている。
  • 国立大学法人の在籍者数は、近年横ばいで推移。一方、教員数は増加傾向が続いている。
  • 教育・研究の質の向上のため、多様な収入源(授業料収入、共同研究収入、資産運用等)の確保を目指すべきではないか。
  • 諸外国の大学や研究機関では、資産運用や民間からの研究受託収入等、多様な研究資金調達が 行われている。
  • 生涯賃金は学歴が高くなるにつれ増加する傾向。大学を卒業した者は入在学時に要する費用に比 して、受ける恩恵が非常に大きい。

というようなことを説明し(上記は資料からの抜粋)、最後にイギリスでの授業料引き上げの取り組みを例に挙げ、名門公立大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスが2006年に授業料を3000ポンドに引き上げて収入の比率を変えたことを取り上げています。議事録はまだ公開されていませんが、イギリスの大学をモデルケースにして、国に頼らない運営にしたらどうかという提案だったのではと思います。

東京大学ならまだしも、国公立大学全体にイギリスのトップ大学の手法を例に出してみるというのは間違っていると思います。

経済学が特に有名で、非アメリカでありながら世界トップレベルの研究・教育を誇り異彩を放つ。 また国際関係学、社会学、社会政策学など多くの学問分野を開拓するなど、経済学のみならず社会科学全般において多大な貢献をしている。近年においては、NGOの運営に関する研究や環境経営学などの分野においてパイオニア的な存在となっている。
現在までLSEは卒業生、教員、創立者から計17人のノーベル賞受賞者、32人の各国首相・大統領・国家元首を輩出しており、Newsweek誌に「欧州で最も政治エリート、世界的な著名人をこれほど多く輩出している教育機関は珍しい。」と評された[3]。
出典:『ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス』(ウィキペディア 最終更新 2015/5/4 09:15)

 

(創立120年で日本の大学よりも歴史が長いわけではありません。)

日本の授業料が高いという人たちは、イギリスの公立大学の学費は安いという主張をしていますが、3000ポンドはほとんど今の日本の国公立大学の学費と同じです。こういう数字を見ていると、誰の主張が正しいのかだんだん分からなくなってきます。

 

審議会の他の議題

同じ資料に、日本の科学技術研究費の話題が載っています。

いわく、

  • 日本の科学技術研究費の総額(官民合わせて)は、対GDP比で主要先進国の中で一番高い
  • 平成に入ってから、科学技術振興費の伸びは、社会保障関連を超える大きな伸び
  • 日本は科学予算に対して論文が少なく、被引用回数も少ない
  • 民間の研究部門も、効率が悪い

としています。言いたいことはわかるのですが、こういう資料を鵜呑みにしてはいけない・・・と思います。

科学技術研究費が伸びているとはいっても、額としては社会保障費の足元にも及びませんし、文部科学省の予算全体は減っているので、振り分け方が少し変わっただけです。参考資料:『一般会計予算/省庁別予算/科学技術関係予算』産学官の道しるべ

民間の研究効率は、

研究開発効率は、企業部門の生産付加価値と研究開発費支出について後方5か年移動平均を取り、5年差の比を求めることで算出。

と書かれています。企業の生産付加価値が5年前の研究開発費支出と比べてどうか、というのを見ていて、日本が低いと言っているのですが、元になった資料「世界経済の潮流」(内閣府)を見ても、企業の生産付加価値が何を指しているのか資料だけ見ても分かりません。日本の製造業は、国内開発、海外生産が進んでいると思いますので、信用できるのか疑問です。

 

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